fc2ブログ
1234567891011121314151617181920212223242526272829
個別記事の管理2012-02-02 (Thu)
今日は市販の書籍の感想です。

芥川賞受賞作家 田中慎弥さんの作品
「図書準備室」 新潮社  1400円

※この作品は芥川賞受賞作ではありませんが、過去に候補となった作品を収録。 
表題と「冷たい水の羊」というまったく関連がない二つの話をまとめた本。

「図書準備室」……第136回芥川賞候補
「冷たい水の羊」……第37回新潮新人賞受賞

この作家さんの芥川賞の受賞記者会見をみて興味がわいたから図書館で借りてきた。
あんな大人らしくない記者会見をするような人が書く作品って、いったいどんなのだろうと思ったから。

読了後……う~ん……
あのままだ……作品は作者さんそのものだ……と思った。
以下、感想。辛口失礼。



「図書準備室」
30過ぎでも家にいる男が、親戚が集まったときにどうして働かないのかを伯母に問われ、その理由を延々と言い訳する話。
話の筋があるような、ないような。
告白形式で書かれているが、非常に読みにくい。
何ページもひたすら言い訳だけで、伯母の合いの手も入らない。
主人公の境遇や考え方は、作者の経歴や言動とそっくりで、どうせならエッセイとして出してもよかったんじゃないかと思った。
話が動き出すまでに40ページ以上。(いや、動いているのかすらわからない。)途中から話が突拍子もない方向へ行ってしまい、どこまでが妄想なのか真実なのかまったくわからないままエンド。
ラストは結局、長々と語ったことはすべて作り話なのか! どうなのか、と読者に驚きをもたせることでおもしろ味を出した作品になっていた。
この作品も芥川賞候補ということだったけど……ううむ。
延々続く自分語りにうんざりしちゃった。
いじめの場面は壮絶だったけど、主人公の考え方に共感もできないし、話が面白かった、とは思えない。
満足度☆2

「冷たい水の羊」
これは自殺願望があるいじめられ少年の話。
「図書準備室」でもいじめの描写があったけど、この話にも残虐ないじめ描写は入っていた。作者さんはこういう描写がお好きなようだ。
新人賞を受賞した作品ということで期待して読んだけど。
うわっ……マニアックな作品だ。
何が言いたい作品なのか読み解くことは、私の読解力では無理。
いじめられてもいじめを認めたくない気持ち、というのは理解できる。それはいいが、だらだらと進んで後半に入ると視点変動が頻繁に入り、内容に入り込めなかった。書きたいことが絞りこめてない感じ。
視点を変動させることで枚数を稼いでいる気もする。
文章はほとんどが地の文で、斜め読みを許さない。ラノベではないから地の文が多いことは仕方がないけど、冒頭からいきなりの読みにくさにのけぞった。一文が長っ!
冒頭引用
【丘の頂上近くの中学校から流れ出て枝分かれし、市の中心を通る国道や南側にある海峡へ届くいろいろな太さの道路の中の一本の小道の傍、秋の夕日を浴びて膨れ上がった花弁や葉が店先に重なり合っている花屋から五十メートルほどの、壁の表面を何度か塗り替えているらしい古いアパートの敷地に、大橋真夫はいた。】
どうして一文にこんなにたくさんの情報を詰め込むんだろう。好みの問題だろうか。文を分けた方がいいと思うのは私の添削病か(笑)
確かに文学的な作品なのかもしれない。
しかし……う~ん……なんの解決にもなっていない結末にあれれ。
主人公の未来って、多少は希望がある?
そう思わないと救われない。
 
新人賞受賞はなかなかできないこと。
すばらしいし、うらやましいけど、こういう作品は読みたくない。
そんな感想しか出てこなかった。
満足度☆1

たぶん、この作者さんの作品は二度と読まないだろう。
他の作品はどうか知らないけど、本作に収められた二作品は、両方とも主人公が暗く、現状に流されるだけ。
自分で状況をなんとかしようという行動力がなさそうに思えたから共感できなかった。
それがこの作者さんの独特の持ち味なのかもしれない。

Return

* Category : 書籍
* Comment : (2) * Trackback : (0) * |

* by かみたか さち
芥川賞や直木賞関係の書物を読んだことがありますが、やはり分かりにくかったです。
分かりにくい=文学的だとしたら、とても私は文学的文章を書きたくないなぁ(笑)なんて。


Re: タイトルなし * by 菜宮 雪
かみたかさま

いらっしゃいませ。

> 分かりにくい=文学的

そうではないとは思うんですけど、確かに、なんとなくそんな公式を作ってみたくなる作品でした。
落ち着いた文章でしたね。完全に書籍向け。ネット小説に慣れている私たちにとっては読みにくく感じるかもしれません。
セリフに「!」を頻繁に使ったりはしませんし、一行ごとの改行もなし。
「図書~」の方はずっと主人公のセリフなので、途中でセリフ内改行も入ってたけど。
あれはあれでいいと思いましたけど、内容がねえ……なんていうか、二つの作品のどちらも、主人公のものの考え方が変わっていました。
その突飛なところがうけたのかもしれません。
コメントありがとうございました!